クラス構成
指導の先生
申込先ほか
藤田昭子

 

にっぽん本物語女性の匠たち

“ものつくり”という仕事をつうじて、信念や生き方を表現する。 そんな日本女性の匠にせまります。

人間が本当に住みたいと思う、そんな空間が作りたかった。

「TOYOTA CAROLLA 広報誌 C-WIND」より

 

 

藤田昭子

焼きものからイメージするもの。それは何でしょうか?小さなお椀?それとも花瓶?さすがに写真のような古代の遺跡を思わせる建築物を想像する人はいないでしょう。でも、これもれっきとした焼きものなのである。この巨大な焼いでなわきもの『出縄』の作者は、現代造形作家の藤田昭子さん。藤田さんはもともと、1950〜60年代には人問像を中心に活動する彫刻家だった。それが『野焼き』という技法との出会いにより、野外彫刻へ表現スタイルが変化した。今からおよそ30年前のことである。しかし、きっかけはさらに時代をさかのぼる。

「戦後の焼け野原の中で人々が手作りでそれぞれの街をつくってゆく、その様子に感動したんです。それは人々のエネルギーが感じられる力強い人間空問だったと思います。」少女期の体験だけに、強烈な印象として残り、その風景は藤田さんの原風景になったという。「復興のプロセスで見た家々、またその街づくりは、現代のアパートやマンションのような人間を収めるだけの管理された住居空間ではなく、人問が本当に住みたいと思う『原・住居空間』の原点ではないかと感じたのです。そして同時にそのような人間のエネルギー溢れる空間を形にしたいと思いました。」こうして『原・住居空間』をテーマにした藤田さんの新たな表現活動が始まったが問題もあった。

「陶芸や彫刻の従来の技法にどこか物足りなさを感じていました。だから私の原点であるこの原風景の制作には、そういった表現からはみだした技法を使いたいと思ったんです。」そこでたどり着いた技法が『野焼き』だった。

「野焼き」から生まれる人と人のつながり。

「私にとっての野焼きとは、土を積みあげ、その土地にあった造形を制作することに始まり、窯を使わずにその場所で人の手によって焼成して、大地を浄化するプロセスのことなのです。ただまるごと焼くことだけを意味するのではありません。」この野焼きのプロセスを経るからこそ生まれるもの・・・ひとつは人と人とのつながり。「野焼きはその土地で作品をつくり、その場で焼くので、火を中心にして祭りのような心に自然となるのです。だからそんな雰囲気を通して、その土地の人々とのつながりも構築されてくるわけです。」実際に藤田さんの制作は、その土地の人々を巻き込んだムーブメントを作りだし、国際的にも高い評価を受けている。
また、自然との密接なかかわりを体感できるのも、野焼きならではである。
「人間をはじめすべての生物が土から生まれて土に戻っていくように、土でつくられた作品も、やがて風化して土へ戻ってゆく。ものプロセスには、作品が自然の中で生きていることをはっきり感じさせてくれる・・・そんな姿に私は美しさを感じるのです。」

もうひとつの顔は教育者。その理念は想像力を養う「遊びの教育」

造形作家としての活動と平行して、藤田さんは50年にわたり幼児を対象とした『波の子造形研究所』を主宰し、美術教育を行っている。その理念は、『遊びの教育』によって、自立した人間を育成すること。「子供たちは日々の生活の中で、粘土などあらゆる材料を使って遊びます。ここでいう遊びは教えられたからするとか、上手下手とかは関係なくて、子供たち自身が自由にイメージを膨らませながら、夢中になって遊ぶということなんです。そういう遊びのプロセスを経ることによって、子供たちの創造力は育てられます。こうしたイメージ教育は子供だけでなく大人にとっても創造力を与えるもの。自分で考えていく力がつくられていくプロセスの先に、一人一人の個性が育てられるものだと私は思います。」また藤田さんは現代という時代だからこそ、こうした『遊びの教育』」の必要性が高まっているのではないかと考えている。「現代はたくさんの情報が飛び交う時代。例えば新聞を読むにしても、記載されていることだけを鵜呑みにするのではなく、その裏側のことも読めるようになること。地に足のついた個人とは、そのような力を持つ人のことではないのでしょうか。『遊びの教育』はそんな力を育てていくことだと私は考えています。」そう考えると、野外彫刻の広場は『遊びの教育』の格好の実践場所になっているこいでなわとに気づく。「迷路のような構造をもつ『出縄』では、各空間がつながっていて、実際に子供たちはその中で何時間も遊んだりします。その遊びのなかで思いがけない出会いや発見があったりして・・・常に創造力を養う空間であり続けていると思うのです」。『原・住居空間」をテーマとした野外彫刻と『遊びの教育』による子供たちへの指導。両者の奥底に流れているものは、私たち自身の生き方・子育てなど、現代社会の在り方に対する問いかけのように見えてくるのである。 藤田昭子関連リンク

「TOYOTA CAROLLA 広報誌 C-WIND」より


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